家族をつなぐテレピー物語 テレピー音楽会

入学式はなかった。クラスの半数ずつが、時間を分けて教室に入り、担任と挨拶をしたのみ。「入学式」と書かれた手づくりの立て看板前で、記念写真を撮った。背中には、まだまだ体に馴染まないピカピカの薄紫色のランドセル。おばあちゃんとおじいちゃんがランドセルを買ってくれた時には、行事がこんなにも尊い時代がやってくるなんて、想像さえしていなかった。

おばあちゃんとおじいちゃんは、近くに買い物に行くか、2人共通の趣味であるピアノと歌の習い事へ行くくらいで、遠出はあまりしないタイプだ。孫の晴れ姿を見ることをずいぶん前から楽しみにしていたので、入学式の中止を受けて残念な様子だったが、未知のウィルスから身を守るのを第一優先に諦めた。それからますます、近所以外出歩かなくなってしまった。

そんなコロナ禍の生活が始まり、2年が過ぎた。学校行事は、人数や入場の制限を設けながら、試行錯誤で開催されているようだ。今年は音楽会が開催されることとなり、娘の提案で、音楽好きのおばあちゃんとおじいちゃんを招待することにした。これには、おばあちゃんおじいちゃんも喜んで、久しぶりの遠出にも前向きになった。

娘は、鍵盤ハーモニカの練習を家に帰ってからも懸命にしていた。おばあちゃんとおじいちゃんの2人も、自分たちが通う音楽教室の発表会が近々あるようで、それぞれ練習に励んでいた。

音楽会直前、再びコロナの感染者数が増え、1日あたりの感染者数はこれまでの記録を塗り替えてしまった。学校から持って帰ってきたプリントには、「音楽会中止のお知らせ」の文字が。

学校行事が中止になることに慣れているのか、娘は意外とあっけらかんとしていた。だけど、おばあちゃんとおじいちゃんをがっかりさせたくない気持ちはある。私は娘と相談し、「テレピー音楽会」を開催することにした。

舞台は我が家のリビング、客席は遠く離れたおばあちゃんとおじいちゃんの家の畳の部屋。司会は私、舞台の端っこから声を出す。「では、これより、おばあちゃんとおじいちゃんのためのテレピー音楽会をはじめます!」

テレピーは、ぐるっと首を娘の方に振り、いざ開演。鍵盤ハーモニカの演奏は完璧だ。娘の成長を感じ、胸が熱くなってしまった。

テレピーの向こう側で鳴り響く2人の拍手。

「とっても素敵だったわ。今度は、おばあちゃんとおじいちゃんのピアノと歌で、テレピー音楽会にご招待するわね」

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