動く電話Telepii(テレピー)

動く電話 家族とつながる物語

家族とつながる物語

家族をつなぐテレピー物語 スキー旅行の日

楽しみを控えていると、とても不安になる。その日を無事に迎えられるだろうかと。自転車を漕ぐ時は怪我をせぬよう慎重に、帰宅後は風邪を引くまいと手洗いを念入りに。そう、細心の注意を払っていたのに、やってしまった。家族旅行の前日のギックリ腰。

小学4年生の息子と妻、息子の友達家族と共に2泊3日のスキー旅行を予定していた。幼稚園からの恒例行事で、年々上達する息子の姿を見るのが、僕の楽しみになっていた。

ピキッ!
スキー道具を取り出すついでに、物置の中を整理している時だった。重い物は持っていなかったから、体勢が悪かったのだろう。

「お父さん、本当にいいの…?」息子が僕に気を遣うように言う。「だーいじょうぶよ!お父さんの分も楽しんで来よう!」妻が明るく笑って、息子の背中をポンポンと叩いた。車の運転もアウトドアも何でも来いの活動的な妻を頼もしく感じた。僕自身が出掛けられないのは悔しいが、息子たちの年に1度の楽しみを奪わずに済んで本当に良かった。

「ほら、お父さん、テレピーも持っていくから安心してね」と妻が言う。テレピーは、遠隔で相手の画面を回転させることで、まるで自分が画面の向こうにテレポートしたような気分を味わえる小さなロボットだ。僕の出張中に、妻と息子のいる自宅の食卓のテレピーと繋ぎ、一緒にごはんを食べることは何度かあったが、持ち出すのは初めてだ。

出発して4時間ほど立って、僕のスマホのテレピーアプリに妻から着信があった。痛みを堪え、ベッドに寝転んだまま受信した。一面真っ白。画面の向こうはスキー場だ。

「ハロー、お父さん、着いたよ!晴れてて最高。モバイルバッテリー持ってきたから外でもテレピー出来るよ。ここで一緒に見よう」と、相変わらず明るい妻の声がした。スキー場にあるベンチに妻が腰掛け、横にテレピーを置いてくるようだった。

「ほら、もうすぐ来るよ」妻の声の元、テレピーを左右に動かして見ると、息子や友人家族が順に滑って来るのが少し、見えた。滑り終わった息子が画面の方に近づいて来た。

「お父さんーー!見えた?上手くなったでしょ」
「そうだな、来年はお父さんより上手になってるかもな」と僕は笑った。
もう一度息子が滑りに行くため画面からいなくなると、僕は妻に向かって言った。
「隣にいるみたいだよ、ありがとう」。

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